| 2008/09/20(Sat) 05:56:09 編集(投稿者) 2008/09/19(Fri) 22:11:33 編集(投稿者) 2008/09/19(Fri) 21:40:11 編集(投稿者)
○それを戒める心
テックレベルオーバー、世界を壊しかねない技術。 未だその明確な定義すらも分からぬまま、ニューワールドの技術はそこに至ろうとしている。 そしてその幻影は、ついにるしにゃん王国にも姿を現した。 精霊機導弾のころより能力が知られてきたこの「古い」現象もまた、TLOであったのである。 住む世界を放棄する方法とも言える世界移動。 これを世界に住む全ての人間が行えば、人によって定義される世界はその姿を失い、崩壊してしまうことになる。
るしにゃん王国に帰還した魔法使い達がその事を聞いて理解したとき、彼らはさらに深く苦しんだ。 人を傷つけない方法として魔法使いが手に入れたはずの世界移動能力が、今度は世界を傷つける。 私達はいてはいけない存在なのか? ジレンマに耐えられずそう叫ぶものもいた。 しかし、心が痛めば痛むほど、悲しみが深ければ深いほどに、 まるで何かのおとぎばなしのように、彼らはなにかを探しはじめた。 自らを正当化するためでなく、同じ立場に陥ってしまっているだろうどこかの誰かを助けるために。 その三日後、彼らは一通の手紙を政庁に届ける。
「星見司として、あるいは魔法使いとして、風を追うすべを追い求めた場合、 その究極は自らの目で他世界を見ることができる世界移動能力であることは自明の理であり、 るしにゃん王国の一部の魔法使いがそうしたように、飽くなき探求の果てに見出す可能性のあるものである。 つまり、世界移動能力の封印はすなわち世界の謎の探求を止めるに等しく、それは星見司の死を意味するのではないだろうか。」 「世界移動能力がTLOであり、またそれを封印する手立てが厳しいものであるのならば、 それを習得するか否は個人の知識,探究心,そして才能に任せる以外にないと思われる。 その上で能動的に能力を技術として平等あるいは無差別に伝承することを禁じ、 行為は心によって抑制をすればよいと、我々は考える。」 それが答えであった。 奇しくも知恵者の言葉と類似していることに、偶然以上の意味を汲み取ることは容易であろう。 その手紙を受けとった政府は魔法使い達との協議を進めた上で、ひとつの法案を国内で定めることを決定した。 それを世界移動法という。NWで初めて表立ってTLOを対象に規制を行った法律である。 本来ならば、るしにゃん王国において世界移動能力を保有するのは魔法使いだけであり、心優しい彼らがそれを悪事に使うということは考えられず、 それだけなら法として定める必要はなかったかもしれない。あの自戒を宣言した手紙がそれをよく示している。 しかし、魔法使いでない者が世界移動能力を獲得する可能性や、魔法使いが悪に染まる可能性は否定できない。 そのためるしにゃん王国は法律という形で能力に鎖をかけることにしたのだった。 世界移動法の主な条文は以下の通りである。全文を掲載することは難しいため、ここでは一部を抜粋した。
世界移動法 第一条 個人が保有する世界移動能力を万人が使用できる技術にすることを禁止する
第二条 世界移動能力を保有する者(以下、能力者とする)が能力者以外に世界移動の方法について、すぐに実践できるほど詳細に伝承するあらゆる行為を禁止する
第三条 能力者は自身が能力者であることを政府,治安維持組織,星見司処へ申告し、管理される義務を保有する また能力者は労働の自由を持つが、それと併せて必ず治安維持組織に所属する義務を保有するものとする
第四条 能力者,非能力者に関わらず、国民は世界移動行為について行為前に政庁への申請を行わなくてはならない。
第五条 能力者,非能力者に関わらず、国民は世界移動した先の世界では目的を達成するための最小限の介入しかしてはならない。 ここでいう介入とは世界とそこに存在するものに干渉するありとあらゆる行為のことをさす。 なお、本条文は自衛権を否定するものではない。
第六条 治安維持組織は突発的な世界移動能力の開花,違法な世界移動行為,ワールドタイムゲートの発生を監視する義務を保有する
第七条 世界移動能力はその国外への持ち出しを禁止する。 能力者がるしにゃん王国を脱藩する際にはいかなる理由があれど世界移動能力を保有するアイドレスは剥奪されなくてはならない。 しかし旅行,遠征などの国民番号が変わらない一時的な出国はその限りではない。
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それは、リューンの活動が引き起こす超自然現象であるワールドタイムゲートやワールドクロス現象を利用して、 人間、あるいはそれに準ずる人型のものを相対的に連続している世界へ転移させるものである。 その方法は可能性移動、クロス移動、物理移動、第四の移動方法の4種類が確認されているが、その中でも有名なものは可能性移動である。 とはいえ実際のところ、最も有名な可能性移動においても、その詳細な方法は不明である。 出張鳥の須田氏曰く「世界移動能力は自力で身につけるしかない」らしく、他人への伝授は困難を極めるものと思われる。
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