るしにゃん王国

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■2139 / 1階層)  本文できました。
□投稿者/ manaly 一般人(2回)-(2008/07/03(Thu) 04:27:12)
    1932文字
    お題:11.恋人達/81.迷宮/108.祭り

    ---------------------------------------------
     本日の長野、るしにゃん王国の天気は雨時々曇り。
     何もなくとも国民が集い、普段はにぎやかになる政庁の会議室も今日は静か――まあ治安維持活動の下準備や、その他あれやこれやでかなりの面子が外に出ているせいもあるのだろうが、今に限って言うならば最大の理由は各々の前に置かれた、一枚の紙だった。
     七夕飾りの短冊である。

    「―――よし、っと」
     渡された短冊にささやか、かつ涙を誘う願い――世界の人々にこれ以上嫌われませんように、とある――を書き終えて、溜息をついたのは緋乃江戌人、通称イヌヒト。
    「あ、もう書けたのイヌヒトさん」
    「ちょ、早っ」
    「まあ願う事もあんまりありませんからね、僕の場合」
     苦笑を浮かべつつ、何杯目かになる薬草茶のお代わりを入れようと、椅子から立ち上がった、そんな時だ。彼の耳がぴくりと動いたのは。
    「……」
    「イヌヒトさん?」
    「あ、ええと」
     言外に何があったのかと尋ねられ、一瞬ばつが悪そうに目を伏せる。
    「いやその、このところ忍者がやけに多いなあと……思ったもので」
     情勢のお陰で公的には隠しているとはいえ、彼はこれでもオーマの端くれだ。医療アイドレスを身に纏い、相手が忍んでいたとしても人の動きくらいはなんとなく判るのである。
    「例の難民保護活動の報告じゃなくて?」
    「いや、それならるし……じゃない、藩王様の所に行くでしょう。どうも違うみたいで」
     普段の雑談のように藩王、るしふぁの名前を言いかけ、慌てて言い直す。流石に場所が場所だ。
     とはいえ、聞いた側はというと、そんな事を気に留める素振りもない。
    「何かありましたっけ」
    「えー? どうだろ。星見司でも理力使いでもなく、忍者となると……」
    「……じゃあ、七夕の準備じゃない?」
     さらりと言い添えたのは目の前の短冊に「せかいへいわ」とやる気のない字で書いている摂政、かすか。
     あー、と何故か納得した顔の一同に、しかしますます顔をしかめるイヌヒトである。
    「えーと……七夕というとあれですよね? 五色の短冊とか、笹の葉さらさらとか」
    「鰻食べるとか」
    「いやそれは季節関係ないですテルさん」
    「えー。せっかくなんですからみんなで食べましょうよーウチの隠れた名物なのにー」
    「別に七夕に限らないじゃないですか、それ……」
     それはさておき。
    「ええと、短冊飾りは既に書かせて頂きましたけど、それ以外になにかあるんですか?」
    「あ、イヌヒトさんは初めてですか、うちの七夕」
    「ええ」
     頷く彼に、にっこり笑って答えを返したのは、ポットを持った乙女ぷーとら。
    「―――るしにゃんではね、七夕の夜に、迷宮が出来るんですよ?」
    「……は?」


     元々は、非常にベタなイベントなのである。それこそ肝試しの恋人版だ。
     参加者は二人ペアとなり、森の中を目的地まで移動する。
     ただし明かりは使用してはならず、事前に装備を持ち込むのもナシだ。ついでに言えば目的地は現地発表。この状態で二人で揃って目的地にまで辿り着けたならば。
    「恋は確実に実ると。まあそういうのだね」
    「困難を乗り越えた先に友情なり愛情なりが強固になる、みたいな感じで」
    「……それは……かなり危険じゃないんですか?」
     森を住まいとするが故に森国人を自称しているとはいえ、夜目は効かないし、身体もかなり弱い。もっと言うなら夜の森は夜行性動物の天下だ。住宅密集地域などの整備された森ならばともかく、るしにゃんの大半を覆う原生林などは、とても進めたものではない。
     地元民でさえそうなのだ。偶然訪れた旅人なんぞが参加したら――
    「だから、今はわざわざ時期を決めて、国が裏から支援する形でやってる訳」
    「それとはまた別に、子供とか観光客用の迷宮もありますけどね。今はこっちの方がよく知られてるかもしれないです」
     ちなみにこちらの場合、あくまで「お遊び用」なので忍者系アイドレス着用者、猫妖精は基本的にお断りである――それに不満を持ったせいか、忍者の隠れ里では里長主催で、より本格的な山岳踏破を目的とした迷宮アタックが行われているという話もあるがまあ、それは余談。


    「という訳で挑戦してみる? イヌヒトくんも」
    「昨今では、ペアなら性別問われなくなりましたしね!」
     にこにこ笑顔でぷーとらが力説する。
    「大丈夫。迷宮って言っても化け物出たり退治したりとかしなくていいんですよ! 夜中だから人目もなくていちゃいちゃし放題です!」
    「しませんっ!」
    「「えー」」
    「……大体そんなこと言っても相手がいないじゃないですか、僕の場合」
     むうと口を尖らせて呟きつつ、違和感を覚える。なんだろう、この感じ。
     どこか何かを忘れているような。
    「現地でもペア組みはやってるよ?」
    「「「それだーーー!」」」
    「ですから出ませんってば!」
    「強情張ったら駄目だよーイヌヒトくん」
     けれど、それもすぐに忘れてしまった。


     七夕が近い、ある雨の日の事である。
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Nomal Re[1]: 七夕準備SS関係スレ / クレール (08/07/03(Thu) 10:57) #2140

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